2014年01月10日

<問23>の解答・解説   

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解答> 芥川龍之介


解説

(1)「犬と笛」の全文は、青空文庫で読むことができます。


(2)作品「犬と笛」の謎 : 児童雑誌に掲載されたこの小説の副題は「いく子さんに献ず」です。いく子さんとは、芥川夫人の文ふみさん(当時18歳)の母の従妹で、当時15歳ですから、もはや児童ではありません。当時、芥川は26歳で、10ヶ月前に結婚したばかりでした(ちなみに、文さんは16歳のときに芥川と縁談契約書を交わし、17歳のときに結婚しています)。なぜ芥川は、新妻の文さんがいながら、わざわざ自らの作品をいく子さんに献じたのでしょうか。作品を献じる人というのは余程大切な人です。

 思えば、この物語も、1人の男性(髪長彦)が2人の女性(御姫様姉妹)の間で不安定な位置に置かれていることを示唆して終わっています。また、この物語は、2人の女神(駒姫と笠姫)が1人の男性(髪長彦)を助けるという話でもあります。2人の女神と1人の男性といえば、立(龍)田姫・佐保姫と、髪長彦ならぬ長髄彦(登美彦)が連想されます(問20ご参照)。更に、生駒北部のまちを舞台とする小説「ペンギン・ハイウェイ」の主人公の少年も1人の女性と1人の少女の間で微妙な位置に立たされています〜<問22>の解答・解説の(8)ご参照〜。

 このように、生駒ゆかりの伝承・物語は、2人の姫(優れた女性)または2人の女神対1人の彦(優れた男性)という図式になっているのですが、この物語の御姫様姉妹と、年齢的にも姉妹のような文さん・いく子さんが重なってしまいます。そのためか、この作品は、その後刊行された芥川の童話集「三つの寶」には収録されず、当時、どの短編集にもついに収録されませんでした。児童向け雑誌に1回掲載されたのみで封印されたのです。

(3)髪長彦の冒険飛行ルート(下記の地図/クリックで拡大 )・・・この作品中に「美しい大和やまと国原くにはらを足の下に見下して、ずんずん空を飛んで行きました。」とある「大和の国原」とは、山々に囲まれた「奈良盆地」のことです。髪長彦たちは、まだ大阪湾につながる「海湾または海水湖」であった奈良盆地の上空を笠置山から葛城山の方へ飛んでいったと思われます。物語的には、海や湖の上空を飛行したとした方が美しいですね。
01髪長彦の飛行ルート○.jpg
(*)参考1 : この物語がゲーム化されていることは、この物語がエンターテイメント性に富むことを示しています⇒「脱出ゲーム 絵本風-犬と笛-」ご参照(脱出の仕方は、このページの「ネタバレ内容を表示」に書かれています)。

  この物語のエンターテイメント的要素の1つが、次のような多彩なキャスト

    山中で現れる3つの異形の神/人間が持っていない特殊能力を持つ3匹の犬/美しい2人の御姫様姉妹/2人の姫をさらう異界の物の怪・妖怪・怪物/妖精のような2人の女神/弱き者のために勇気を奮い立たせる柔でこころ優しい主人公/(男の嫉妬ほど醜いものはないが、その醜悪さを持つ)見かけ倒しの無骨で卑劣な侍という主人公とは対照的な男たち。



(*)参考3 : 生駒山の駒姫について


(*)参考5 : 生駒山のこと